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旧法借地権の「建物の朽廃(きゅうはい)」とは・・・?

2019.11.11

今回は旧法借地権の建物の「朽廃」という用語について、ご説明いたします。
旧法借地権は、借地権上に建物が存在し、かつ借地権上の建物が借地人名義で登録されていることが対抗要件(第三者へ主張できる要件)となっております。そのため、建物が滅失してしまったときは当然、借地権が消滅しますが、建物が「朽廃」していると判断された場合にも、借地権は消滅してしまうのです。
しかしながら、この「朽廃」しているという判断は非常に難しく、判例でも意見が分かれるところです。一つの判例を基に朽廃の状況、判断基準についてご説明いたします。



建物構造部分の全面的な補修を必要とする借地権上の建物は朽廃しているか?


<建物の状況>
築40年を経過する建物を所有している借主A、昭和63年に契約が更新された以後も継続して借りている。

建物自体は昭和20年代に建築され、部分的に補修・修理はなされているものの、土台・柱などの構造部分については修理が行われていない。正面から見て建物右側が傾斜しており、屋根の棟の形も変形している。屋根の瓦も暑さが薄くなり割れやズレも見られ、雨漏りが発生している。室内も腐食が激しく、無人のまま長年放置されてきたため、再度使用するためには早急に基礎補修・土台全面取替えで建物の傾斜を直し、瓦全面取替え、電気ガス給排水設備を全取替えなどの全面的な補修が必要



【判旨】本判決では、上記の借地権の消失を認めました。


本件建物は建築後40年という長期間が経過し、全体的に劣化が進んでいるほか、無人のまま長年放置され、補修も充分にされておらず、保守管理が不十分であったことから、基礎・土台・柱及び屋根といった構造部分にほぼ全面的な補修を行わなければ使用できない状況に至っていることを考慮すると、その補修には新築同様の費用が必要であると推認される。すでに建物としての社会的、経済的効用を失うに至り、朽廃しているので本件借地権も消滅したと認められる。

(東京高判平5・8・23判時1475・72)


本判決は、建物の「朽廃」に関し、建物の状況を子細に検討し、建物の現況(劣化状態)、管理状況、使用のために必要な修繕内容の観点から、建物の社会的・経済的効用の有無を判断し、朽廃を認めています。
この判決は、借地上の建物の朽廃について、裁判所は厳格に判断しているところを示しており、本判決は朽廃の肯定事例として、実際の主張立証のポイントを考えるにあたり非常に有用であると思われます。

実際に建物が「朽廃」して借地権消滅、という実例は未だありませんが、借地人さんも高齢化していく中、お一人暮らしの借地人さんが多く見受けられますので、実際に当てはまる事例も増えてくる可能性があります。
借地権は一つ一つで事例が異なりますので、お困りの際はお気軽にご相談くださいませ。