オーナー向け情報

共有名義の不動産と家族信託

共有名義の不動産と家族信託

すでに共有名義となっている不動産の場合

 事例 
80歳代の兄妹3人がいます。20年前に父親から相続したアパートを3人の共有名義で持っています。古いアパートですので、そろそろ大規模修繕を行うか、もしくは売却してしまう、建て替えることも考えなければなりません。最近、長男の健康状態が思わしくなく、物忘れも増えたようです。また、他の兄妹もいつ何が起こっても不思議ではない年齢です。
兄妹は仲が良く、もめることはないのですが、長男の年齢や健康を心配しているようですが、今のうちに何かできることはないでしょうか。

このようなケースで想定されるトラブルとしては、
1、共有者の意見がまとまらないこと
2、共有者の一人が認知症になってしまうこと
などの理由により、スムーズな老朽化対策を実行出来なくなることが考えられます。
さらに、それぞれに相続が発生するとその分だけ共有の名義は増えていき、もはや「動かすことが非常に困難な物件」となってしまいます。

◆家族信託を利用すると・・・
この兄妹3人が健常なうちに、兄妹3人を委託者兼受益者とし、例えば長男の子どもを受託者とした信託契約を結びます。こうすることで、
①将来、共有者の誰か1人が意思能力や判断能力を失ってしまう事態が発生しても、このアパートの管理や処分は受託者の権限で行う事が出来ます。
②仮に今すぐにアパートの売却等を検討するとして、80歳代の兄妹が売却の条件等の交渉や判断を行うのが困難であっても、受託者が兄妹3人に代わり交渉等の権限を持つことが出来ます。
③もし長男に相続が発生した場合でも、長男が持つ「受益権」を長男の子が相続しますので、通常の相続と何ら変わるものではありません。そして、引き続きアパート全体の権限を受託者が行使することができます。
④長男以外の兄妹が亡くなった場合でも、受益権はそれぞれの相続人に引き継がれるので、相続人は実質的に持ち分を共同相続したのと同じ効果を得ることができます。
⑤たとえ売却せずに、兄妹一族の財産として所有し続ける場合でも、大規模修繕や建替え等の契約権限を受託者に集中させることが出来ますので、共有者全員の承諾と協力を得る必要がなくなります。

これからの共有を回避したい場合

 事例 
大田区に住む80歳の父親です。私には息子(同居)と、その妹である娘(他県で別居)がいます。自宅をマンションに建替えて、その1部屋で暮らしながら賃料収入を得ています。将来、この自宅と一体となったアパートは息子に譲りたいと希望しています。財産はこの土地と建物(マンション)がほとんどで、現金等はありません。しかし、マンション建築時の借入金返済がまだ10年以上残っています。
相続対策として始めたアパート経営ですが、他にやるべきことはないでしょうか。

このケースは相続対策として借り入れを起こし不動産経営を始めたパターンです。確かに相続財産の評価額を下げることが出来ておりますが、このまま何もしないと、相続時に別の問題が発生します。
それは、相続時に土地と建物(マンション)が相続人である「息子と娘の共有財産」となるリスクです。兄妹間の仲の良し悪しに関係なく、共有になるとマンションの修繕や将来の売却を考えたときに、息子は妹である娘と連絡を取り、承諾を得る必要が出てきます。
そしてさらに、将来どちらかの意思判断能力が失われる事態になれば、もはや大規模修繕や売却などの処分が出来なくなります。

◆現状のままで共有を避けるためには・・・
①娘に対し別途同価値(時価評価)の財産を準備し、遺言にその旨を残しておく
②息子が妹である娘に「時価評価に換算した代償金」を準備する

◆家族信託を利用すると・・・
父親を委託者兼受益者、息子を受託者とする信託契約を結びます。そのうえで信託契約書の中に、父親の相続発生時には、受益権の半分を息子に、そしてもう半分を娘に与える旨を明記します。こうすることで、息子は父親の相続後も引き続き不動産経営を自分の判断で行うことが出来るとともに、娘は父親の遺産の半分を相続したことと同じことになります。

家族信託は認知症対策としてとても効果的な制度ですが、今回の事例のように「共有問題」や「遺産争い」につながるリスクがあるにもかかわらず、どうしても共有を解消できない場合などは、家族信託を上手に組み合わせることを検討されることをお勧めします。ご不明点やご相談などは、お気軽にお声掛けください。